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第115話

その瞬間、パァンッと銃声が中庭に響いた。 銃弾は見事に短刀だけにヒットし、ミリィの手から離れて草叢の中に飛んでいった。 「俺のお姫様に、手を出さないでくれる?」 中庭と部屋をつなぐ扉の前に立っていたのは、笑顔で銃口をこちらに向けるエルヴィドだった。 「エルヴィド=クライトマン………。 気づくのが早かったのね」 「シエルが心配でさっさと終わらせようとしたら、急に冷や汗垂らして慌て出すからさ。さすがにおかしいでしょ。まさか、俺の取引相手が共犯だってことは、予想外だったけどね」 「私もよ…。あなたが女に手を出すのは、予想外だったわ」 「俺だって女の子に手を出したくないよ?だから、俺のお姫様から手を離してくれるかな。ミリィちゃん」 ピリピリとした空気が辺りを包んだが、その一触即発の状況を破ったのはミリィだった。 「あなたがその子を手放さなければ、別に用はないわ。アルベールの次は、クライトマンをたらしこむなんて、随分と淫乱な子なのね。それじゃ、失礼するわ」 ミリィは中庭を後にし、ヒールの音を立てながら姿を消した。

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