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第119話

シエルの体や体調を優先するなら、絶対にアルベールに返すわけにはいかない。 今までのアルベールの行いを考えると、今回エルヴィドがシエルを連れ去ったことで、罰を受けるのはシエルだろう。 エルヴィドには、アルベールがどんな非道な行為をしてくるか、予想がつかないのだ。 しかし、シエルの気持ちを優先してやるならば、シエルがアルベールといる方が幸せと言う以上、シエルを返してやる方がいいんじゃないかとも思っていた。 シエルは盲目にアルベールを愛し、そして、エルヴィドは、アルベールもシエルのことを好きなのではないかと思っている。 何が原因でそんなに捻くれたのかは分からないが、たかが一人の奴隷のために部屋を用意したりだとか、そんな特別扱いはしないはずだ。 ましてや10億も払い、今まで城の者の性欲処理としてしか取らなかった性奴隷を、自分のために買ったのだ。 アルベールにも何かしらの感情があるはずだと踏んでいた。 シエルの恋を実らせるためにも、返してやるべきなのだろうか……。 エルヴィドはシエルのために、必死に悩んだ。 ふと顔を上げると、ベッドサイドに置かれたシエルの母親の写真があった。 それを見て、この一週間でシエルに聞かれた、一つの言葉が思い出された。 『エルはどうしてそんなに僕に優しくしてくれるの?』 だって、そんなの…………。 「シエル………、ごめんね。 君に一つだけ嘘をついた。」 エルヴィドは自嘲するように微笑を浮かべ、そっと目を閉じ、過去の記憶を思い出した。

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