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第121話
「マリア!そんな姿勢だと体に負担がかかるだろう!こっちに座りなさい」
「あなた……。大丈夫よ、今エルヴィド君とお話ししてただけ」
「ああ、そうだったのか。二人ともこちらにきて話しなさい。もうすぐ生まれるんだから……」
血相を変えて駆け寄ってきたランベリク王に、マリアは苦笑しながら、エルヴィドに手を差し伸べた。
マリアの腹部は大きく膨らんでいて、エルヴィドは思わずお腹に触れた。
「赤ちゃん……?」
「そうよ。もうすぐ生まれるの。
名前はね、シエル……。
シエル=ランベリクよ」
「女の子?」
「いいえ、男の子。必然的に跡取りになっちゃうし、大変な思いをさせてしまうかもしれないわね……」
そう呟くマリアの表情は、どこか悲しそうに見えた。
マリアをどうにか元気にできないかと、エルヴィドはマリアの手を握った。
「俺がシエルのこと守る!幸せにしてあげる!だからマリアさんは安心して!」
まだ子どもだったエルヴィドができるのは、それくらいだった。
でも、エルヴィドのそんな言葉で、マリアは嬉しそうにエルヴィドを抱きしめ、
「ありがとう」
と、そう言ってくれた。
そのときエルヴィドは強く思った。
俺は母親としてこの人を求めているんじゃない。
一人の女性として好きになってしまったのだと。
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