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第123話
シエルが生まれてから、メジエールは鎖国の体制をとった。
エルヴィドはティエンヌの跡取りとして、国を統率するため、勉学や技術練習に取り組まなければならなくて、マリアやシエルに会いに行く日は取れなかった。
エルヴィドが思春期に入るに従い、性の勉強の一環で、教育者である使用人を抱いたこともある。
あれからセックスの気持ちよさを知ってしまったエルヴィドは、何人もの女性を抱いた。
エルヴィドが抱く女性は全員美しくて儚い人。
マリアを抱きたくて、
でも彼女は一国の王妃で…。
報われることのない恋心を、ずっと胸に秘めてきた。
そしてエルヴィドが18歳の時、
突如メジエールは滅びた。
隣国であるペリグレットに滅ぼされたのだ。
それも、シエルを残して他全員が、国全てが破壊されたのだ。
ずっと恋い焦がれて仕方がなかったマリアも、もうこの世にいない。
エルヴィドは絶望と共に、ヴィクトリアに強い憎しみを抱いた。
生き残されたシエルは、まだ12歳のはずだ。
そんな幼い彼が、自分を囲んでいたもの全てを失って正気でいられると誰が思うだろうか?
「マリアさん……、俺が絶対シエルを守るから。」
きっとシエルを生かしたのは、マリアだ。
マリアのためにも、昔交わした約束のためにも、エルヴィドはシエルを見つけ出さなければならない。
父である国王に頼み込んで、ティエンヌの多くの兵士たちをシエルの捜索に当てた。
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