128 / 266
第128話
アルベールは眠りについたシエルを横抱きにして、奴隷が収容されている地下室よりも、さらに地下深くにある地下牢へ向かった。
そこには、戦争で捉えた他国の王や大臣、貴族など、かなり多くの上流貴族が収容されていた。
ここにいる者達は水分だけ与えられ、食事の類は一切与えられずに、生き地獄のような生活を強いられている。
餓死する者が増えていく中、
ある日アルベールは牢内に武器を与えた。
するとどうだ、生き永らえたいがために、共に収容されている人間を殺して、生身の人間を食べる者が多く現れた。
この牢内には、人間というよりは化け物と言った方が正しいような者だけが生き残っている。
アルベールがシエルを連れて地下牢へ足を踏み入れると、人間達は目を光らせ、檻を揺らして息を荒げ始めた。
ここ3ヶ月ほど足を運んでいなかったせいか、フロア一帯が死んだ人間の腐乱臭や、血や排泄物の匂いが充満していて、アルベールは顔を顰めた。
檻に囲まれた地下牢の中央にある、石で出来た拷問台にシエルを乗せて、四肢を完全に固定した。
「ヴィクトリア!!その人間をこっちに寄越しやがれ!」
「えれぇ綺麗な男だな。グッチャグチャに犯してから美味しく食ってやるよ…、ヒヒッ」
「ここに連れてきたってことはそいつも俺たちと一緒でいつ死んでもいい人間なんだろう?早く檻に入れろよぉ!」
ケラケラと笑いながら、彼方此方の檻からシエルを求める男達の汚らわしい声がする。
シエルを求める、というよりは生きるための食物を求める、というのが正しいのか。
「相変わらずここは虫唾が走るな。」
アルベールはゴミを見るような目で人間達を睨み、悪態をついた。
ともだちにシェアしよう!