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第141話
枕からほんのりアルベールのコロンの香りがして、シエルは自分がいなかった間、アルベールはここで寝ていたかもしれないと想像し、顔を綻ばせながら大きく息を吸った。
今の自分ができることは、これくらいしかない。
アルベールに早く触れたい。
枕に顔を埋め、アルベールの匂いに包まれながら、シエルは自身の性器を握り、クチュクチュと動かした。
自慰に耽っている間に寝落ちてしまっていたシエルは、もぞもぞと布団から顔を出した。
外は暗い闇に包まれており、この空間で唯一光を放つ、窓から見える月明かりに目を見やった。
ベッドサイドのテーブルには、お盆にシチューやパンが置いてあり、僅かに湯気も立っている。
おそらく、運ばれてから、そこまで時間が経っていないのだろう。
多少の気怠さを感じるものの、シエルのお腹はギュルギュルと鳴って空腹を伝えていたため、シエルは上肢を起き上がらせて、シチューに手を伸ばした。
「あっ……!」
長い期間の監禁と寝起きのせいか、シエルは手に力が入らず、シチューの入った器をひっくり返してしまった。
熱々ではないものの、生暖かいシチューがシエルの下肢とシーツにかかり、シエルは気持ち悪さに眉を下げた。
シチューをそのままにして、パンに手を伸ばしたが、パンも少し冷えて固くなっていて、食べにくかった。
パンを皿に戻し、シエルは自身の下肢を見下げた。
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