142 / 266

第142話

白く汚れる衣服を見て、シエルは後のことを想像し、怯えた。 このままではアルベールに怒られてしまうのではないか。 それとも呆れられる? どちらにせよ、いい反応をされないのは明白で、シエルはどうすればいいのかもわからずに、飛び散ったシチューを指に取って舐めた。 自分についている分はとりあえず指で掬ったのだが、シーツや床に溢れた分はどうしようかと手が止まった。 床に落ちたものを取るなんて、自分以外の奴隷のことを思い出す。 初めて見た奴隷の扱われ方は、シエルの脳内に嫌なほど焼きついていた。 ああはなりたくない。 そう思って、性奴隷になることを選んだ。 今考えると、それが正解なのかもわからない。 シエルが手を止めたまま物思いにふけっていると、部屋の扉が開いて奴隷である女が入ってきた。 「シエル様、どうされたのですか?」 「ん……と……、シチュ……こぼしちゃ…て……」 「すぐにお拭きしたいのですが、私アルベール様の命令がないと何も出来ないので……。すぐにお聞きしますね」 「あ……、や!!」 『やだ』と言う前に、奴隷は部屋を出て行ってしまい、シエルはアルベールが来て怒られてしまったらどうしようと頭を抱えた。

ともだちにシェアしよう!