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第157話
「クソッ……」
扉を後ろ手で閉め、アルベールはその場で座り込んだ。
エルヴィドにシエルが拐われてから、シエルは以前とは少し変わった。
アルベールに甘え、縋るようになったのだ。
そして、以前にも増して隙だらけになった。
エルヴィドに甘やかされていた証拠なのかもしれないが、自分に対して甘えてくる意味も分からないし、第一、自分をエルヴィドの代わりにされているのが嫌だった。
それでも、シエルに縋られるのは気分が良くて、自分しかこいつを救ってやることが出来ないんじゃないかと錯覚してしまう。
甘えられることに慣れていないアルベールは、まるで雛のように従順なシエルに絆されていることを自覚し、自身のらしくない行動に悔いていた。
「……………た……けて…ぇ…」
扉の向こうから、微かにシエルの泣き叫ぶ声が聞こえる。
つい部屋に戻りそうになるが、これ以上干渉してはいけないと、手を引っ込めた。
こんなことを続けたら、いつかシエルはエルヴィドを求め始めるのだろうか。
シエルは何故、あんなにもエルヴィドに会いたいと訴えてきたのだろうか。
あの二人を会わせる事に意味はあるのか…?
「俺はどうすれば……」
アルベールは歯を食いしばりながら、拳を握った。
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