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第162話
シエルの目元は、泣き続けたことで赤く腫れており、エルヴィドは付いて入ってきたバルトに、水で濡らしたタオルを持って来るよう伝えた。
「ありがとう。バルトさん」
「いえ。ここでの雑務は、先ほどアルベール様に仰せつかったので」
「抱きしめるくらいはいいかな?性的なことではないし」
「そうですね。私はいいと思いますが」
「なら、ヴィクトリアには黙っていてくれるかな?あいつはすぐ怒って、シエルにあたるからね…」
エルヴィドはバルトからタオルを受け取り、シエルの目を冷やしながら、バルトと少し言葉を交わした。
シエルは涙を止めようと、必死にぐすぐすと鼻を鳴らしていて、それを手伝うように、エルヴィドもシエルの背中を優しく撫でた。
落ち着きを取り戻したシエルは、喘ぎ続けて疲れたのか、エルヴィドの胸の中で眠そうに丸まった。
そのまま寝かせてやりたいのは山々なのだが、エルヴィドにはそんなゆっくりしている時間はない。
あの短気なアルベールがストップをかける前に、シエルの相談というものを聞いておきたかった。
「シエル、眠る前に少し話をしたい。頑張れる?」
「……ん」
シエルは目を擦ってこくこくと頷き、エルヴィドの膝の上から降りて正座した。
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