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第163話
「相談があるって聞いたんだけど、
その前に一つ聞きたい」
「……なに?」
シエルは顔を上げ、エルヴィドを見た。
エルヴィドのとても真剣な表情に、シエルは今から何を言われるのかと、少し緊張する。
「せっかく帰ってきたのに、こんな酷いことされて平気なの?シエルが望むなら、俺のところへ帰ってきてもいい」
エルヴィドは優しく、シエルにそう聞いた。
けれど、シエルの意思はもう固まっていた。
「…幸せだよ。アル様と一緒にいれるなら、どんな事されたって我慢できる」
「でも…っ」
「親不孝かもしれないけど、僕はアル様が好き。心が苦しくなるくらい大好き。復讐するなんて、初めから無理だったんだ。
ずっと、アル様と一緒にいたい」
あまりにも健気なシエルの発言に、エルヴィドはこれ以上シエルとアルベールを引き離すような言葉を発することはできなかった。
そして、初めてシエルを目にしたバルトも、酷い仕打ちをされてもなお、アルベールを想い続けるシエルに驚きを隠せなかった。
「そっか……。じゃあ、次はシエルの番だね。相談って何?」
エルヴィドはシエルの頭を撫でながら、優しく問いかけた。
シエルは表情を曇らせて、小さな声で話し始めた。
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