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第169話
「シエルを大切にしてやってよ。さっきの言葉はシエルの本音だ。彼は君を愛している。どうか、裏切らないで」
エルヴィドは去り際に、悲しそうに目を伏せてそう言った。
バルトはエルヴィドを見送るため退室し、部屋にはアルベールとシエルの二人だけになった。
気持ちよさそうに眠るシエルの頬に触れると、シエルは口元を嬉しそうに緩めた。
「おまえはどうして俺なんかを……」
大好きだった両親を殺した相手など、憎んで当然だ。
日に日に従順になっていくシエルに、何度も困惑した。
酷いことを強いても自分を慕い、更にはこんな自分に好きだと言う。
感情のままに行動して、シエルに期待させてしまうようなことをしてしまっているのではないかと、アルベールは頭を悩ませた。
「俺はお前を愛していいのか……?」
シエルに情を入れないと心に決めていたのに、そんな決意をも簡単に崩してしまう自分の意志の弱さとシエルの気持ちに、アルベールは拳を壁に打ち付けた。
そして、シエルに毛布をかけ、気持ちを鎮めるために部屋を出た。
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