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第172話

部屋に一人になったシエルは、キャラメルマキアートを少し飲んで、その甘さに笑みを浮かべた。 アフタヌーンティーを楽しむのは、エルヴィドの城にいた時以来だなと少し嬉しくなった。 シエルは、まだ14歳だ。 精神的に熟しているわけでもなく、まだ子ども同然なのだ。 こういった時間が好きなのは、当然のことなのである。 拘束もされていないシエルは、ベッドから立ち上がり、焼き菓子の置かれたテーブルまで移動して、ソファに腰を下ろし、甘いおやつの時間を堪能した。 テーブルにはマドレーヌやフィナンシェ、マカロンなど、たくさんの甘い焼き菓子が置いてあり、シエルは満足するまで食べていた。 シエルがあと一つ、とマドレーヌに手を伸ばそうとすると、後ろから腕を回され、引き寄せられた。 「食い過ぎ………、でもないか」 「アル様…っ?!」 腕の中で慌てふためくシエルを片手で抱き寄せ、アルベールも焼き菓子に手を伸ばして口に入れた。 「甘い…。よくこんなもの食えるな」 「アル様、どうして…」 「夕飯食べられるのか?全く。甘やかすなと言ったのにこれだ」 「ア、アル様っ…」 捕まえられていると言った方が正しいのであろうが、抱きしめられているということ自体に、シエルはドキドキと心臓を鳴らして、弱く抵抗した。

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