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第175話
目を覚ますと、もう隣にはアルベールの姿はなかった。
きらきらと眩しい光が窓から差して、朝を知らせる。
「シエル様、おはようございます」
部屋のテーブルに朝食を用意していたバルトは、シエルが起きたことを確認して、頭を下げた。
「お体の調子はいかがですか?動けないのであれば、そちらにお持ちいたします」
「う、動きます!……ひぁっ!」
バルトに昨夜のことを知られているのかと恥ずかしくて、シエルはベッドから立ち上がった。
しかし、激しい情事のせいか、足腰に力が入らずに床に崩れ落ちた。
「無理なさらないでください。こちらにお持ちいたしますから…」
「ごめんなさい……」
バルトは軽々とシエルを持ち上げてベッドに乗せ、テーブルに用意していた朝食をベッドサイドに運んだ。
プレートには焼きたてのパンや、ふわふわのスクランブルエッグ、スープは湯気のたったポタージュに、デザートにはベリーソースのかかったフルーツ添えのヨーグルト。
全てシエルに合わせた量と味付けで用意されていた。
「どうぞお召し上がりください」
「いただきます…」
シエルはスプーンを握ってふぅふぅと冷ましながらポタージュを口にした。
「美味しい…」
「お口に合ってよかったです。私は今からアルベール様の外出にご同行しますので、本日は別の者に食事を運ばせます。ごゆっくりしてください」
「バルトさん、ありがとうございます」
「いえいえ。それでは私はこれで失礼致します」
バルトは時計で時間を確認して、少し早足気味に部屋を後にした。
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