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第177話
部屋を後にしたエルヴィドは、一緒に部屋を出てきたバルトに向き合った。
「シエル、すごく元気になっててよかった。ちゃんと食事も取れているようだし、ここに戻して、正解だったのかもね」
「アルベール様がシエル様の気持ちを汲み取ってのことでしょう。アルベール様は本当は優しい方なのですから」
「世界最恐っていう割に、可愛いところもあるんだね。まぁ、俺はバルトさんがヴィクトリアを説得したんだと思っているんだけど」
「ご冗談を」
エルヴィドはバルトの無表情の裏に隠された何かが、以前から気になって仕方がなかった。
その能面を外すように話を切り込もうとしたが、バルトは上手く話を躱した。
「別室でアルベール様がお待ちです。領土拡大の件についてだと思いますが」
「それより、俺は君と話がしたい。ヴィクトリアと話がついたら、君の時間をくれないか?」
「すみません。私も業務が滞っておりまして」
徐々に目線を外すバルトに気付き、エルヴィドはバルトの肩を掴んだ。
「君は奴隷制度を憎んでいる。
そうなんでしょう?」
エルヴィドの言葉にバルトは俯き、
「後で話しましょう」と、アルベールの待つ応接室まで、無言で歩いた。
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