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第203話

「ア、アル様……!ドクドクする…っ」 「あぁ」 腕を回すと、シエルの心臓がドクドクと強く早鐘を打っているのが伝わり、なぜかそれが心地いい。 先ほどまで恥ずかしがって隠れていたくせに、抱き寄せるとこうして慌てながらも、大人しく従うシエルに、征服感で満たされる。 「俺が好きか?」 何も考えずに口から出た言葉は、アルベール自身も驚くほど、馬鹿みたいな質問だった。 「え…?す、好き…っ!!」 驚いたように上を見上げ、頬を赤らめて必死に気持ちを伝えてくるシエルは、とても可愛らしい。 この言葉に応えてやりたい。 アルベールはシエルに想いを伝えられるたびに、何度も心の中ではそう思っていた。 けれど、あることが引っかかって、自分の本当の気持ちは口には出せない。 「俺はお前のことが嫌いだ」 アルベールは目を合わせず、そう呟いた。 シエルは寂しそうに俯いたが、くるりと体を反転させてアルベールのシャツをぎゅっと握った。 「それでも、僕はアル様のそばに居られるだけでいいです…」 「馬鹿だな、おまえは」 壊れ物を扱うように、アルベールはそっとシエルの背中に腕を回して、強く抱きしめた。

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