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第204話

そして、戦争を明日に控えた夜、 アルベールはシエルの部屋を訪れた。 あの後、シエルはアルベールのそばを離れるのを嫌がり、仕方なくまた手足に枷をつけてベッドに縛り付けていた。 啜り泣く声が止まず、アルベールが自分のシャツを与えると、シエルはそれを抱きしめて静かに眠りについた。 あれから四日が経ち、今に至る。 「シエル」 名前を呼ぶと、シエルはぴくりと肩を揺らして扉に目を向けた。 バルトが休暇を取っている間は、また奴隷に食事を運ばせていたのだが、どうやらシエルは、あまり食べていないようだった。 「食ってないのか」 「………」 「風呂、入れてやる」 シエルの枷を外して抱き上げてやると、少し細くなった体や、体重が軽くなったことが分かる。 寂しかったのか、それとも拗ねているのか、 全く言葉を発しないシエルを浴室に入れ、体を隅々まで洗ってタオルで包んだ。 自分以外の体を洗ってやるなんて、昔は考えもしなかったなと、アルベールは苦笑する。 「シエル、明日から少し城をあける。 その間、お前はクライトマンの城にいろ」 「え…?」 アルベールの突拍子も無い言葉に、シエルは思わず聞き返した。 アルベールにとって、エルヴィドにシエルを預けるなど、不愉快極まりない。 しかし、今回は長く見積もって、三ヶ月はかかりそうな戦争になる。 前回のことも踏まえて、長期間シエルを一人で部屋に置いておくのは、かなりのリスクが伴うだろう。 アルベールは気に入らないが、シエルを一番安全なエルヴィドの所へ預けることを決めた。

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