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第209話
眠りについたシエルを見つめ、エルヴィドは一つ息を吐いた。
今回、ペリグレッドが戦争を仕掛けた国、カルバン。
カルバンは軍事力、国土、富、ほとんどの分野において高い能力を誇っている国だ。
最近栄えているペリグレットといえども、まだ兵士の数で、カルバンに負けているはずだ。
戦争を仕掛ける時期は考えた上であろうが、エルヴィドからすれば、まだ早いくらいだと感じていた。
もし、戦争に勝ったとして、多くの兵士が命を失い、そしてペリグレットも多くの損害を被ることは目に見えている。
それに、アルベールの身にもしものことがあれば…。
今やアルベールに依存してしまっているシエルは、アルベールがそばに居ないだけで、こんなにも不安定な状態だ。
これ以上のことを考えると、背筋がゾッとした。
仮に自分がシエルの心を癒せたとして、アルベールという恋敵から、正々堂々とシエルを奪えないのはあまり快くない。
シエルとペリグレットを護るだけでなく、加勢を送ってやろうかとエルヴィドは真剣に悩んだ。
そして、眠りながらも一筋の涙を流すシエルを見て、起きてからにでも何かシエルの気を紛らわせてやれるようなことがないか、さらに頭を悩ませたのだった。
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