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第210話

「エルヴィド様」 「ん?」 エルヴィドはペリグレットへ加勢を送るための準備で忙しく、事務的な用事をこなせてなかったことから、ずっとシエルのそばにいる訳にもいかなかった。 シエルを起こさない程度に、軽く声をかけてから廊下へ出ると、使用人の一人が声をかけてきた。 「最近、ティエンヌに妙な男がいるそうで、ある人を探しているようなんです。全身が白い不気味な男らしく、国民から何度か連絡が……」 「それは困ったな。今はシエルがいるし、俺も業務で手一杯だ。君たちには悪いけど、兵士何人かを国の見回りに回して、その男を見つけ次第、国からは出してもらえるかな?念のため身分は確認して。頼むね」 「かしこまりました」 深々と頭を下げる使用人の横を通り過ぎ、エルヴィドは自室に籠もって山積みになった書類に目を通し始めた。 その資料は各国からの貿易申請や援軍要請など様々だ。 援軍は信頼できる国以外にするメリットはないため、無視してもいいのだが、貿易などの交流は蔑ろにはできない。 ティエンヌはまだまだ大国とは言いがたく、隣にペリグレットがあり、同盟を結んでいるため、安全であると言うほかない。 エルヴィド自身、ティエンヌの軍事力はそう低くはないと自負しているが、周りの国からは評価を得られておらず、攻めてきた国を返り討ちにしたことも少なくない。 その話が広がっているのか、時々スパイとしての不法入国があり、協力的で温厚な国民は怪しい者などを発見次第、すぐに城へ連絡を寄越してくれるのだ。 今回連絡を受けた男もその類だろうと、エルヴィドはため息をつき、問題ごとは起こして欲しくないと切に願った。

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