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第211話
5時間ほど経っただろうか。
全ての資料に目を通し終わったエルヴィドは、グッと背筋を伸ばして息を吐いた。
「エル…」
「ん?どうしたの?」
紅茶でも飲もうかと腰をあげると、自室を出てすぐ隣に、シエルが小さく縮こまりながら座っていた。
「どうしたの?こんなところで」
「……起きたらエルが居なかったから」
「寂しかった?」
エルヴィドは屈んで笑いながらシエルの頭を撫でると、シエルはエルヴィドの胸元に顔を埋めて頷いた。
親が亡くなってしまって、気持ちの整理を図りにくいのだろうか。
少し赤ちゃん返りというか、シエルは度々こうやって甘えることがある。
よしよしと背中をさすりながら、シエルを抱き上げると、シエルは安心したように眠り始めた。
「ほんと天使みたいだな……」
エルヴィドは可愛すぎるシエルの寝顔を見て、うっとりと息を吐いた。
窓からは夕陽が差し込み、部屋を茜色に染めていた。
シエルをベッドに降ろし、エルヴィドも夕食まで隣で眠ることにしたのだった。
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