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第219話

「エル〜!鳥さんが帰ってきたー!」 「ほんと?今行くから少し待ってね」 エルヴィドが書斎でペンを取っている最中、ドタドタと足音を鳴らしながら、シエルが書斎に入ってきた。 六日前に飛ばした鷹が、シエルの部屋にある中庭に帰ってきたのだろう。 手紙を書きたいと強請るシエルの分も、一緒に巻きつけてやったから、その返事が気になるのだろうか。 ここ一週間で、一番はしゃいでいるシエルを見て、つい笑いが溢れた。 シエルに腕を引かれながら中庭へ行くと、エルヴィドの愛鳥である鷹が、シエルが作った不恰好な止まり木に止まっていた。 脚には二枚の手紙が括り付けてあり、その内の一枚をシエルに渡した。 シエルはその手紙を開き、キラキラと目を輝かせてエルヴィドを見た。 「エル、見て見て!『待ってろ』って書いてる!僕、アル様のことずっと待ってる!」 つい、アルベールとの関係性を忘れてしまいそうになるほど、シエルは幸せそうに笑い、大切そうに手紙を胸に寄せていた。 国のことで恨みがあるだろうに、と同情している気持ちはエルヴィドの中で消えかけていて、今はそんなしがらみを忘れて、好きな人と幸せになってほしいという気持ちの方が優っている。 だからこそ、アルベールには生きてもらわないと困るのだ。 「シエル、そろそろお茶にしよう」 "シエルが二度と傷つかないように" エルヴィドはそう心に決めていた。

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