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第220話
甘い匂いに包まれながら、シエルは焼き菓子を口へ運んでいた。
エルヴィドもシエルの隣りに座り、フォークを手に取った。
「ねぇ、エル。アル様はもう直ぐ帰ってくる?早く会いたいなぁ…」
シエルは少し足をばたつかせ、食べる口を止めて、そわそわとした様子でエルヴィドにそう聞いた。
手紙には礼と現在地が書いてあった。
その地区は、カルバンの兵の養成所や中規模の武器庫を要する要塞がある。
おそらく、アルベールはそこを潰してから、カルバン本拠地を攻めるのであろう。
いよいよ戦争が始まるのだ。
シエルにも教えてやろうと思っていたのだが、やっと精神状態も安定して笑顔が見られてきたというのに、余計な心配をかけて、気持ちに荒波を立てたくはない。
アルベールのことだから、負け戦などは考えていないだろうし、エルヴィドも負けるとは思っていない。
けれど、この要塞を落とせたとして、カルバンへ到着するのはあと1週間はかかるだろう。
そこから本格的な戦争が始まり、それが終わって、やっとアルベールは帰還するのだ。
だからこそ、シエルには話してやるべきか迷っていた。
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