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第225話

シエルは部屋に戻り、お風呂に入る準備をした。 部屋の隅には広めの浴室があり、今日は週に二回の泡風呂の日だった。 丸い大きな浴槽はたくさんの泡で溢れており、黄色いアヒルがプカプカと浮いている。 脱衣所でバスタオルとヘアキャップ、パジャマを用意して、シエルは浴室に入った。 シエルは鈍く光る貞操帯を愛おしそうに撫で、頭や体を洗ってからそっと浴槽に入った。 「気持ちいい……」 ここはシエル専用の浴室であり、お湯の温度から浴室の温度、湿度まで全てシエルの好みの設定に保たれている。 気持ちよすぎて、時々眠りこけてしまうことがあるのだが、いつもはエルヴィドがそばに居てくれるため安心だ。 今日は一人だししっかりしないと 、とシエルは目を擦った。 両手で泡を掬い、ふぅっと息を吹きかけると、シャボン玉のように泡がとんだ。 「アル様、何かあったのかな……」 不安がいっぱいで、胸がギュっと締め付けられる。 辛い時はエルヴィドに相談すれば、アルベールに連絡をするよう伝えておくとも言っていた。 けれど、やっぱりアルベールのお荷物にはなりたくないと、シエルは考えないように努めた。 十分にお風呂を楽しみ、体を流してタオルで水分を拭った。 脱衣所へ出て、サラサラとしたシルクのパジャマに袖を通し、ドライヤーで頭を乾かしてナイトキャップを被った。 モコモコのスリッパを履いて、もう寝てしまおうと脱衣所を出ると、そこにはいるはずのない人物の姿があった。

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