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第235話
部屋を出て、また次の階段を走る。
確実に最上階へは近づいているが、二人の体力はかなり削られていた。
敵兵は人数は少ないといえど、上に行くほど腕の立つ者が揃い、先ほどのように去(イ)なすことができなくなってきている。
「そろそろ決着をつけないと、キツイな…」
もうあと2フロアといったところだが、どれくらいの敵兵がいるのか予想がつかない。
ここにきて50人以上猛者がいれば、命を捨てる覚悟をしなければいけないだろう。
次のフロアへかかる一歩を踏み出そうとしたとき、ヒュッと音がした。
「危ない!!!」
アルベールはバルトに腕を引かれ、庇われた体勢のまま、長い階段を落下した。
どうやらトラップを踏み、アルベールに向かって一直線に弓矢が飛んできたらしい。
アルベールは幸い怪我はなかったが、隣を見るとバルトは頭から血を流し、意識を失っていた。
「バルトっ!クソ。早く帰らねぇといけないってのに」
戦争のことだけに思考を集中させていたアルベールだが、窮地に立たされ、シエルのことが頭によぎった。
「こんなところで、くたばっていられるか」
アルベールは服を細長く破き、包帯代わりにバルトの流血部に巻いて、一人で決着をつけようと、一歩を踏み出した。
「お待ちください!!」
「貴様らは………」
アルベールの後方には、実に100人程の兵士が跪いていた。
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