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第240話

重厚な扉を開けると、そこには、街を見下ろしながらおろおろと逃げ惑う、カルバン王の姿があった。 そして、部屋の隅には一人、首輪を嵌められた裸体の女が倒れていた。 「に…、逃がしてくれ!頼む!要求はなんでも応じてやる! 金か?地位か?それとも、この国か?」 早口に言葉を並べるカルバン王を無視し、アルベールはティエンヌ兵に担がれたバルトに目をやる。 「バルト、あの女か?」 バルトはアルベールの視線をたどった。 霞む視界の中で見えたのは、ボロボロの女。 7年前とは違い、髪の毛も無造作に伸び、体は痣や傷で埋め尽くされ、人が変わったように、虚ろな瞳をした女。 それでも、バルトには、彼女が姉であるレベッカだと分かった。 「姉様………っ」 神経を軽く損傷したのか、バルトは思うように体を動かすことができなかった。 必死に腕を伸ばし、姉を呼んだ。 「姉様…っ!!」 「バ…………ル…ト……………?」 バルトの声に返事をするように、 レベッカは虚空を見ながら、そう呟いた。

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