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第242話

バルトを担いでいたティエンヌ兵が、アルベールを確認すると、アルベールは頷いた。 「無理はなさらぬよう…」 ティエンヌ兵はバルトを残し、部屋の外へ去っていった。 いつでも殴りこめるよう、銃を構えて息を潜め、中の様子を伺う。 「はっはっは!!そんなに姉のことが好きか?ペリグレットもこんな使えない男をここに連れてくるとは、呆れたものだ!」 「…………」 「この女のどこに、そこまでの魅力がある?どれだけ中に出してやっても、子供一人さえ生みやしない!」 「…………っ」 「なんでかと思って医師に調べさせたらなぁ、私が何度も腹を殴り続けたからだったんだと!この腹でどれだけの子供が死んだだろうなぁ?10?20?もっといたか?なぁ、レベッカ!」 「…………貴様ァ!!!」 「バルト!駄目よ!逃げなさい!!」 レベッカが声を上げて止めるが、バルトは怒りに身を任せ、辛うじて動く右側の脚で地面を蹴り、カルバン王目掛けて、剣を振り上げた。 「掛かったな」 王はニヤリと笑い、右手に隠したスイッチを押そうと手をかけた瞬間、レベッカが全身の力を振り絞り、バルコニーから体を出した。 「幸せになってね」 レベッカを掴んでいたカルバン王を道連れに、高さ500mの城の頂上から二人は落下した。 「姉様ーーーーーーーー!!!!!」 最期に見たレベッカは、 7年前と変わらぬ、優しい笑顔だった。

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