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16章【傷跡】

あれから二週間、 アルベール率いるペリグレット軍はようやく帰還した。 帰ってくる日を見据えていたエルヴィドは、シエルを連れて、ペリグレットの城の前で、一緒にアルベールの帰還を待っていた。 「アル様っ…!!」 「あ、こら!シエル、まだ走っちゃ駄目!」 アルベールの姿が見えた途端、シエルはエルヴィドと繋いでいた手を振りほどいて、走り出した。 しかし、太腿の傷はまだ完治しておらず、しばらく安静にしていて筋力の衰えたシエルは、ふにゃっと左脚から崩れ落ちた。 「シエル!」 「退け」 エルヴィドが急いでシエルに駆け寄ったが、頭上から声がして上を向くと、そこには、先ほどまで遠くに見えていたはずの、アルベールの姿があった。 「シエル」 その一言だけで、シエルはうるうると瞳に涙を溜め、アルベールに抱きついた。 「アル様!」 「待たせたな」 「僕、ちゃんといい子で待ってたよっ…」 「あぁ」 アルベールは軽々と片手でシエルを抱き上げ、エルヴィドに対峙した。 「クライトマン、援軍を寄越してくれたおかげで助かった。感謝する」 「まぁ、シエルのためだしね。それよりその不機嫌な顔はもちろんシエルの脚のことだよね…」 「当たり前だ。さっさと説明しろ」 アルベールはシエルの左脚を見ながら眉を顰めた。

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