246 / 266

第246話

「それね、ミリィちゃんが…」 「違う!!僕が刺した!!」 「シエル……」 エルヴィドがミリィの名前を出した瞬間、シエルはミリィを庇うように声を上げた。 エルヴィドは苦笑いして、アルベールに目配せした。 「シエル。黙っていられないなら、今すぐこの手を離すが、どうする?」 「嫌っ!」 「なら、黙ってろ」 アルベールに制されて、シエルはしゅんと悲しそうな顔をして、アルベールの胸に顔を埋めた。 「で。ミリィがなんだ?」 「うん。そっちに援軍を送るよう調整している時にね、少し警備が甘くなって、その間にシエルに近づかれた。左脚もそうなんだけど……」 「なんだ?まだ他にあるのか?」 「いや……、うん。どうやら強姦されたみたいで……」 「やだ!!聞きたくない!!!」 アルベールの服を掴むシエルの手にギュッと力が篭り、その行動は真実を物語っているようなものだった。 「シエル、帰るぞ」 アルベールはシエルにそう声をかけてから、城の門へと足を進めた。 「ヴィクトリア、とりあえずお疲れ様。 シエルのこと、怒らないでやってね。その子なりに、ちゃんと考えたんだよ」 後ろからエルヴィドの声がしたが、あまり耳に入れずに、アルベールとシエルは城の中に姿を消した。

ともだちにシェアしよう!