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第251話
甘い香りと小さな物音に、シエルは微かに目を開けた。
アルベールとは夜中まで体を交え、眠りについたのは、たしか日を跨いでからだったと思う。
体やベッドは綺麗になっていて、少し大きめのバスローブが着せられていた。
「シエル様、おはようございます」
「……おはようございます」
テーブルの近くでは、バルトがモーニングの準備をしていた。
左半身の動きが少し鈍く、シエルは不思議に思ってバルトに尋ねた。
「お恥ずかしながら、戦争中少し負傷してしまいまして。リハビリのおかげで、かなり良くなりましたよ」
「大丈夫……?」
「ご心配おかけして申し訳ありません。私はこの通り、ちゃんとお仕えできますので、心配なさらなくて大丈夫ですよ。
さぁ、朝ごはんにいたしましょう」
バルトは微笑み、シエルのベッドサイドに立った。
シエルは起き上がろうとするが、左腿の傷が痛み、顔を歪ませた。
「昨日アルベール様が手酷く抱いたようで、少しだけ傷が開いたようです。医師に診てもらいましたが、痛むようでしたら薬の処方をお願いしてきます」
「ん……、大丈夫」
ベッドから起き上がり、ふわふわのスリッパに足を通して、バルトと一緒にテーブルへ向かった。
「バスローブも、シエル様用に作り直さないといけませんね」
「……?」
床にバスローブを引きずりながら首を傾げるシエルに、バルトは苦笑しながら椅子を引き、シエルを座らせた。
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