254 / 266

第254話

「シエル様、お食事ですよ」 「んぅ……」 優しい声が聞こえて目を開けると、朝と同じように、バルトが食事の準備を終えて、ベッドサイドに立っていた。 シエルは目を擦って、テーブルの方へ向かった。 「わぁ!」 「本日は、シエル様のお好きなものをご用意しました」 テーブルには、好物のハンバーグや野菜のクリームスープ、焼きたてふわふわのパンが並んでいて、シエルは目を輝かせた。 元々王族育ちのシエルは、正しい作法で綺麗に食事を完食した。 「大浴場もいつでも入れるよう準備しているので、また、お好きな時にお声掛けください」 「じゃあ三十分後に入ってもいいですか?」 「もちろんです。またお迎えにあがりますね」 そう言って、バルトは部屋を出て行った。 シエルはソファに座って、自分の手首に触れた。 「僕、奴隷なのに、こんな生活してていいのかな…」 ここへ来た頃、他の奴隷は言っていた。 アルベールが奴隷に関与するだけでも、とても珍しい事だと。 なのに、執事であるバルトにシエルの世話係まで任せるなんて、贅沢すぎるのではないか。 心優しいシエルは、他の奴隷と扱いに差があることに、罪悪感を抱いていた。

ともだちにシェアしよう!