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第254話
「シエル様、お食事ですよ」
「んぅ……」
優しい声が聞こえて目を開けると、朝と同じように、バルトが食事の準備を終えて、ベッドサイドに立っていた。
シエルは目を擦って、テーブルの方へ向かった。
「わぁ!」
「本日は、シエル様のお好きなものをご用意しました」
テーブルには、好物のハンバーグや野菜のクリームスープ、焼きたてふわふわのパンが並んでいて、シエルは目を輝かせた。
元々王族育ちのシエルは、正しい作法で綺麗に食事を完食した。
「大浴場もいつでも入れるよう準備しているので、また、お好きな時にお声掛けください」
「じゃあ三十分後に入ってもいいですか?」
「もちろんです。またお迎えにあがりますね」
そう言って、バルトは部屋を出て行った。
シエルはソファに座って、自分の手首に触れた。
「僕、奴隷なのに、こんな生活してていいのかな…」
ここへ来た頃、他の奴隷は言っていた。
アルベールが奴隷に関与するだけでも、とても珍しい事だと。
なのに、執事であるバルトにシエルの世話係まで任せるなんて、贅沢すぎるのではないか。
心優しいシエルは、他の奴隷と扱いに差があることに、罪悪感を抱いていた。
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