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第258話
(あったかい………なんだか安心する……)
ぽかぽかとした心地よい温かさを感じて、ふわふわの綿にギュッとしがみついた。
……ふわふわ?
「うわぁ!!」
ゴツゴツとした硬さに違和感を覚えて起きてみれば、夢見心地のシエルが綿と思いながら抱きついた相手は、深い藍色のバスローブを着たアルベールだった。
アルベールが眠っていることに気づいたシエルは、アルベールを起こしてしまわないよう、ハッと息を呑んだ。
けれど、シエルがしがみついたせいか、アルベールのバスローブは少し乱れ、胸元が開いていた。
先ほど大浴場で裸のアルベールを目にしてしまったシエルにとっては、これほど目に毒なものはない。
バクンバクンとはち切れそうな心臓を抑え、体を丸めた。
(止まれ…、止まれ止まれ止まれ!)
離れていても聞こえてしまうんじゃないかと思うほど、シエルの心臓はドキドキしていて、シエルはベッドから抜け出そうと起き上がった。
「どこに行く」
「ひゃあっ!」
そっと抜け出そうとしたつもりだったが、アルベールを起こしてしまい、腕を引かれて、またアルベールの懐に戻ってきてしまった。
後ろから抱きしめられるような体勢になってしまって、シエルは恥ずかしさに硬直する。
このまま事に及ぶのかと思い身構えたが、いつまで経ってもアクションはなく、シエルは不思議に思い、お腹に回されたアルベールの手を触った。
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