258 / 266

第258話

(あったかい………なんだか安心する……) ぽかぽかとした心地よい温かさを感じて、ふわふわの綿にギュッとしがみついた。 ……ふわふわ? 「うわぁ!!」 ゴツゴツとした硬さに違和感を覚えて起きてみれば、夢見心地のシエルが綿と思いながら抱きついた相手は、深い藍色のバスローブを着たアルベールだった。 アルベールが眠っていることに気づいたシエルは、アルベールを起こしてしまわないよう、ハッと息を呑んだ。 けれど、シエルがしがみついたせいか、アルベールのバスローブは少し乱れ、胸元が開いていた。 先ほど大浴場で裸のアルベールを目にしてしまったシエルにとっては、これほど目に毒なものはない。 バクンバクンとはち切れそうな心臓を抑え、体を丸めた。 (止まれ…、止まれ止まれ止まれ!) 離れていても聞こえてしまうんじゃないかと思うほど、シエルの心臓はドキドキしていて、シエルはベッドから抜け出そうと起き上がった。 「どこに行く」 「ひゃあっ!」 そっと抜け出そうとしたつもりだったが、アルベールを起こしてしまい、腕を引かれて、またアルベールの懐に戻ってきてしまった。 後ろから抱きしめられるような体勢になってしまって、シエルは恥ずかしさに硬直する。 このまま事に及ぶのかと思い身構えたが、いつまで経ってもアクションはなく、シエルは不思議に思い、お腹に回されたアルベールの手を触った。

ともだちにシェアしよう!