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第259話

「しないんですか?」 「疲れたから寝る。お前も早く寝ろ」 上の方からそう返事が聞こえ、予想外の事態にシエルはついていけなかった。 お風呂の途中から記憶がない上に、起きたらアルベールのベッドの中。 おまけに、セックスもせずに一緒に寝るだけなんて、今までアルベールと過ごしていた生活を振り返れば、あり得ないことだった。 シエルの心臓はさっきから、休みなくバクバクと動き続けている。 たしかに、アルベールは戦争を終えてすぐで、相当疲れが溜まっているはずだ。 シエルがご主人様であるアルベールをゆっくり休ませたいと思うのは当然なのだが、アルベールの裸体が頭から焼き付いて離れず、シエルの中心は反応しかけていた。 (こんなのバレちゃ……嫌われちゃう) シエルをこんな体にしたのはアルベールなのだが、シエルは刷り込みにより、全部自分が悪いと思ってしまっていた。 性処理に使われなくなるということは、すなわち、アルベールの性奴隷としての役目を失うことと同じだ。 つまり、捨てられるか、他の奴隷と同じように使われるかの二択になってしまうのではないかとシエルは怖くなった。 シエルは一緒に寝られるという嬉しさと気恥ずかしさ、捨てられるかもしれない恐怖に襲われ、眠れない一夜を過ごしたのだった。

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