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第262話
一年中暖かな気候に恵まれ、咲き乱れる桃色の花々。
しかし、日が沈むと、柔らかな印象とは一変し、ネオンの輝く夜の街へと変化する。
此処、ラブリエルは桃色の国。
獲物を誘い、そして喰い尽くす。
朝と夜の顔を持つ、恐ろしい国。
可愛らしく、お淑やかな若い女も、
くしゃっとした笑顔で周りを和ませるお婆さんも、
きゃっきゃとはしゃぐ少女達でさえ、
夜には雄を喰らう獣へと変化する。
世の男は何も知らずにこの国へ訪れ、
そしてこの国から帰ることはない。
この国に入った男は、
たった二種類にだけ分けられる。
欲に溺れ、女性に囲まれて暮らす者。
将又、国からの脱出を図り殺される者。
その二択だ。
アルベールは多くの女性の欲情した視線を浴びながら、国の真ん中にそびえ立つ城へと足を踏み入れた。
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