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その②お家に連れて帰りましょう
美形の誘いに乗った信之助は、その日に店を辞めさせられた。オーナーから何か文句を言われるかもと心配していたが、どういう訳かいいよと簡単に許してくれた。しかも、美形に対してオーナーはヘコヘコしている。
「じゃあ行きましょうか。えっと、名前は?」
「信之助だけど」
「じゃあ、ポチ。帰りましょうか」
いきなりポチと呼ばれ困惑したが、信之助に拒否権はない。何せ、日給8万出してくれる雇い主だ。失礼があってはいけないのだ。
だから笑った。自分よりも年下の男にポチと呼ばれたが、信之助には我慢する道しか残されていない。それもこれも、日給8万の為だ。
美形に手を引かれ、そして乗せられたのは高級車。ベンがツの車を、初めて生でみた。キラキラした目で車を見る信之助の姿を見て、美形は面白そうに笑っている。
「さぁ、ポチ。この車に乗ってください。こんな車ですけど、乗り心地はいいですよ」
「いや、この車をこんな車って言うなよ。もったいない」
「まぁ、ポチがそう言うならもう言いません。それよりも、早く乗ってください」
急かすように背中を押され、車に乗り込む。やっぱり、高級車なだけあって乗り心地は最高だった。
「じゃあ、ポチの新しい家に連れていきますね」
「新しい家って、俺アパート借りてるんだけど」
「心配しないでください。明日までには、ちゃんとアパート解約してきますから」
住み込みで働けってことなのかな?少し不思議に思ったが、気にしないことにした。聞けばいいと思うが、何となく美形の笑みを目の前にして言えるわけがなかった。
そしてしばらく経った頃、車が停車した。着いたのかなと思い、信之助は車の窓から外を見た。そして驚く。
車が停車したとある屋敷の門の前。そこには、秋島組とでっかく書いてある表札が見えた。
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