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その④自己紹介をしましょう

美形な組長に手を引かれ、屋敷の中に入る。信之助の目の前に広がったのは、もう見たこともないような広い玄関。もしかしたら、自分の部屋と同じくらいあるんじゃね?と思ったぐらい、玄関だけで広い。 口をポカンと開けて信之助が驚いていると、美形な組長は楽しそうに笑っていた。 「ポチ。そんなにこの家が気に入ったの?」 「気に入ったというよりも、ついていけないんだけど。いや、ですけど」 「別に敬語使わなくてもいいですよ。俺の方がきっと年下ですし、ね。ポチ」 そう言われれば、信之助は頷くしか出来なかった。雇い主がそう言うんだから、これからは失礼な態度も普通にとってやる。 あ、でもここってたしかヤのつく家業のお家だったはず。やっぱり逆らってはいけないと、心の中で勝手に結論づけた。 「まぁ、詳しい話はおいおいするとして。お茶でも飲みましょう。それとも、ポチはお酒の方がいいですか?」 「いや、酒はいい。おじさん今さ、禁酒中で。その代わりにカルピス飲んでるんだけど、ある?」 「……………カルピス?」 「そう、カルピス」 信之助がカルピスにハマってると聞いて、美形な組長の目の色が変わった。しかも、うっとりした顔で信之助を見る。その表情に少し身の危険を感じて、そっと1歩後ずさった。 「組長。部下の目もあります。それぐらいにして、お茶にしましょう。信之助さんがご所望のカルピスも、用意したんで」 後ずさって逃げる信之助に伸ばされた美形な組長の手を、インテリ系イケメンが取った。そしてお茶の準備が出来たから+部下の目があるからと、屋敷の中にあるとある部屋に連れていった。そのあとを信之助がついていく。 案内された部屋は、これまたとてつもなく広かった。そして、壁にかけてある額縁には【仁義】の文字か。 「まぁ、見てお分かりの通り、ここはヤクザが住む屋敷です」 「だろうね」 インテリ系イケメンが用意してくれた、キンキンに冷えたカルピスを1口飲んだ。なんかオシャレなグラスに入っているからか、いつもより美味しい気がした。 「ちなみに、俺は羽山藤四郎(はやまとうしろう)と言います」 「藤四郎君ね」 「君は、つけなくていいです。そしてここにおられるのが、」 インテリ系イケメン(名前は、羽山藤四郎)が、美形な組長を紹介しようとした。だが、言葉をなくした。 何故なら、デジカメを片手に信之助を撮っていたからだ。信之助自身も驚いた。 「…………いつもは、こんな感じではない御方なんですけど」 「ふーん」 「まぁ、気を取り直して。ここにおられる御方は、この秋島組の組長であらせられる秋島佐久良(あきしまさくら)さんです」 「秋島佐久良、23歳。1年前に組長に就任したばかりですが、よろしくお願いします」 美形な組長(名前は秋島佐久良)が手を差し出してきたから、挨拶的な意味を込めて信之助はその手を握った。

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