10 / 85

その⑨仕事を与えましょう

「さて、朝ごはんも食べたことですし。そろそろポチには日給8万の仕事をしてもらいましょうか」 食後のお茶を飲みながら佐久良が言った。やっと仕事だと、少し背筋を伸ばして信之助は座り直す。どんな仕事をさせてくれるんだろうか。ここ、ヤクザの屋敷だしかっこいい仕事させてくれるかもとか思っていた。 だが、そんな仕事を佐久良が信之助にさせるわけがなく。 「屋敷の掃除とかしてください。今はそのぐらいでいいです」 「は?」 「可愛いポチには、こっち側の仕事をさせるわけにはいきませんから」 ニッコリと笑う佐久良に、口を尖らせる信之助。 「でも、この屋敷キレイじゃん。俺が掃除とかする必要ないとは思うけど、」 「それは、あなたにはキレイな部屋しか見せてないですから」 佐久良の言葉に、周りにいた人すべてが視線をそらした。もちろん藤四郎もだ。視線をそらした意味が分からない信之助は、1人首をかしげる。 「まぁ、見てもらった方が分かりやすいですかね。手始めに、藤四郎の部屋でも」 「っ、駄目です!!!」 必死にダメと言い張る藤四郎の姿を見て、信之助は何となく想像がついた。そして周りが視線をそらした理由も何となく分かった気がした。 そうかそうかと頷きながら藤四郎に近づいて、ポンと信之助が肩を軽く叩いた。 「お前、部屋きたねーの?」 「うっ」 藤四郎の反応で、自分が言った言葉は正しいんだと気づいた。そっか、汚いのか。 「もしかして、他のやつらも?」 信之助が周りに聞けば、皆が視線をそらして頷いた。 「ま、汚いなら俺が片付けてやる。男同士だし、別に見られて恥ずかしいもんとかないだろ?あ、エッチなDVDとか漫画は布団の中に隠しとけよ」 「いや、別にいいですから」 「遠慮すんなって。な、藤四郎に他の奴等も」 ニコニコと笑う信之助の姿に、やっぱり断ろうと藤四郎が口を開いた時だった。 「ポチに仕事、させるよなお前ら」 ボソリとそう呟いた佐久良に逆らえるわけもなく。 「…………………お願いします、信之助さん」 藤四郎は、ペコリと信之助に頭を下げて頼んでいた。

ともだちにシェアしよう!