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その⑫一緒に遊んであげましょう

信之助にとって久しぶりの外は、他人の視線が痛いものだった。何せ、おっさんが美形と手を繋いで歩いているのだ。何やってんだこいつらって思っているだろう男の視線が痛いし、美形と手を繋ぐなんて羨ましいと言っている女の恨みのこもった視線も痛い。 その視線に耐えられなくて、何度か手を離してくれと頼んだが佐久良は聞いてくれず。信之助が諦めるしか道は残されていなかった。 「ポチは、何かしたいことありますか?久しぶりの外ですからね、付き合いますよ」 「手を離してくれるのが1番してほしいけど、無理って言うんだろ?だったら、ゲーセン行こう!」 「………ゲーセン?」 「え?お前、知らねーの?」 「何となくは知ってますが、1度も行ったことはないですね」 「高校時代とか、友達と行ったりしなかったのか?」 「まぁ、こういう仕事の家系でしたから。友人はいなかったですよ。俺と遊んでくれる友人は。うわべだけの友人は、結構いたんですけどね」 そう語った佐久良の横顔がどこか寂しそうで。気づいたら、信之助が佐久良の手を引いて歩いていた。 「ポチ?」 「だったら、なおさらゲーセンに行こうぜ。いろんなゲームがあって、楽しいんだぞ」 「……分かりました」 寂しさはどこかに消えたのか。佐久良に笑みが戻った。それにホッとして、信之助はさっきよりも強く手を引っ張って歩いた。 そして向かうのは、信之助が昔から行きつけだったゲーセン。レトロなものから最新のものまで、いろんなゲームが揃ったゲームセンターだ。 「ほら。ここがゲーセンなんだけど、何からする?今日は俺が全部金出すから、気にせず遊べ」 「ポチにお金を出させるわけには、」 「こちとら、日給8万貰って貯まってんだ。だから気にすんなって」 そう言っても、佐久良が頷く訳がなく。仕方ないから、勝手にUFOキャッチャーの前に連れていってお金を入れた。 「じゃ、佐久良。あの人形取って」 「へ?」 「ほら。もう金は入れたから、やって」 信之助が指を指して指定したのは、1つ目だったり2つ目だったりする黄色い生き物の人形。最近テレビで見て、信之助が気に入ったキャラだった。 でも、中々取れなさそうな位置にその人形は置かれていた。初めてだし、すぐには取れないだろう。ここで時間を稼いで、いっぱい金を使わせてやろう。 そう考えていたのに。 「取れましたけど」 佐久良は、1回でその人形を取ってしまった。

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