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その⑯気にしてあげましょう
佐久良に手伝われて1週間が経った。その間、恥ずかしい信之助は佐久良を避ける。避けられた佐久良は、日に日に不機嫌になっていく。
「何かあったんですか?」
「まぁ、な」
「詳しくは聞きませんけど、早く仲直りしてください」
“じゃないと、部下達の身が持ちません”
藤四郎の視線の方を向けば、佐久良にギロリと睨まれている秋島組のしたっぱがいた。よほど佐久良の睨みが怖いのか、体をプルプル震わせていた。
確かにそろそろ仲直りをした方がいいと、信之助自身も分かってはいるのだ。でも、あんな恥ずかしい姿を自分よりも年下の佐久良に見せてしまって。
おっさんでも、恥ずかしい時は恥ずかしいのだ。
「でも、今は組長から離れていて正解です」
「何で?」
聞けば、藤四郎が黙って視線を別の方に向けた。信之助もつられてそちらを見れば、見たことのない男が2人立っていた。屋敷に入れるってことは、秋島組の関係者だとすぐに理解できたが。
「なんか俺、値踏みされてるように見られるんだけど」
「当たり前です。あの方達は、この屋敷にあなたがいるのを快く思っていませんから。だから組長は、あなたに近づかないんです。危害に合わないように、と」
佐久良のそんな優しさが、信之助はちょっと嬉しくて。
「でも、ちょっと寂しいかも」
「元々自分から避けといて、何言ってるんですか」
「それとこれとは、話が別な」
ケタケタと笑いながら、信之助はちゃちゃっと佐久良にメールを送る。避けててごめん的なこととかその他いろいろ書いて、メールで送ってやった。すると返信がすぐに来て。
『ポチを気にして守るのは当たり前です』
信之助の方をチラチラ見ながら、佐久良がそんな返信をするものだから。
「分かった。じゃあ、早めに解決してね。ダーリン」
とふざけて返信を送ってみた。自分の気にして、守ってくれている佐久良の為に。そしたら、またまたすぐにメールの返事がきて。
『解決したら、ダーリンって呼んでください』
そうふざけたことを言ってきたから、短く2文字でイヤと返信してあげた。
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