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その⑳誓いをたてましょう

「本当、ポチは恥ずかしがり屋ですね」 「恥ずかしがり屋って、俺のいろんなことを聞いた男が言う言葉かっ!」 「はい、聞きました。ポチの大好きなあだる、」 「言うなっ!」 叫んだせいで息切れを起こした信之助に、佐久良は大笑いをプレゼントする。たぶん、秋島組の組員がこの場にいたら、驚くだろう。佐久良がこんな風に笑う姿を見たことがないのだから。 それは、佐久良本人も分かっている。信之助といるだけで、自分は本当に楽しい時間を過ごせていると。 佐久良の組長としての窮屈だった世界を変えたのが、キャバクラで出会った信之助だ。一目惚れと言ってもいい。それぐらい、佐久良は信之助に目を惹かれた。 「ポチ」 「なによ、」 「本当にポチは可愛いですね」 「35歳のおっさんに、可愛いとか言うなよ。せめてダンディとか、男っぽいとか」 「は?」 「首をかしげんなっ」 キーッとなりながらも、信之助は心の中で笑っていた。本当に楽しい。心からそう思えた。 最初の頃は、日給が8万円だからと何でも言うことは聞いた(たぶん)。でも今は、日給を貰えなくてもここにいたいとさえ思うことも多々ある。 ヤクザだけど、秋島組の皆は優しかった。ただの一般人である信之助の言うことも、素直に聞いてくれた。 「――――――――さくら」 「ポチ?」 「これからも、日給8万円で俺を飼ってくれるか?」 自分で何を言ってるんだと思った。でも、言わずにはいられなかった。本当、楽しそうに笑う佐久良の姿を見ていたら自然と言葉が出た。 「―――――当たり前ですよ、ポチ」 “飼い主は、ペットが死ぬまで飼い続けないといけないんですからね” 「約束、しましょう」 「おう」 佐久良が差し出した小指に、自分の小指を絡め合わせる。昔ながらの約束方法。嘘ついたら、針千本飲ます。 「「指きった」」 END 「なわけないでしょう、ポチ」 「え?ENDじゃないの?」 「ENDじゃないです。これからは、俺とポチの目眩くラブストーリーが待ってます」 「うそーん」 「と言うことで、首輪つけましょう」 「何でっ」 「もしつけてくれたら、日給を8万5千円にあげます」 「よし、つけよう」 やっぱり信之助は、金に弱かった。

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