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その22仕事に同行させましょう
信之助が朝起きると、珍しく佐久良が起きていた。最近は、信之助からおはようのチューを貰わないと頑固として起きなかったのにだ。
「佐久良、お前もう起きてるの?」
「はい。今日はちょっと急ぎの仕事がありますので」
「じゃあおはようのチューは、」
「しますよもちろん」
佐久良がそう言ったと思ったら、いつの間にかキスをされていた。いきなりのことだったので、何も出来なかった信之助。叫んでやろうと思ったが、今はまだ朝の7時で叫ぶには早い時間だった。
いつか、いつかこいつをギャフンと言わせてやる。心にそう誓いながら、信之助はキッチンに向かおうとした。昨日から仕込んでおいたカレーを、朝皆にガッツリ食べてもらおうと思っていたのに。
「今日は、朝食の準備はいいです」
「は?」
「朝は藤四郎に任せてますので、ポチは俺の仕事に同行してください」
佐久良の言葉に首をかしげる。仕事に行く佐久良を何度も見送ったが、仕事に同行しろと言うのは初めてだった。佐久良のことだから、ヤクザの仕事に自分を付き合わせないと勝手に思っていた。
でもまぁ、暇も暇であるし佐久良は雇い主いや飼い主である。飼い主のいうことを聞くのは当たり前だ。
「同行するのはいいけど、」
「じゃあ、スーツに着替えましょう。普段着で会いに行く相手ではないので」
「うえー。俺スーツ着るの久しぶりだわ」
「そうですか。じゃあ、ネクタイは俺が閉めてあげます。そうだな、色違いのネクタイにしましょう」
「お前と?なんでまた、」
「さすがに首輪はつけて行けませんから。それなら、ネクタイをと。どうしても、あなたは俺の物だと知らしめたいんですよ」
「こんなおっさんをか?」
「ちまたでは、おっさんは人気あるんですよポチ」
よく分からないが、ネクタイぐらい色違いでも全然気にならないので頷いておく。すると、佐久良が本当に嬉しそうな笑みを見せるから、頷いて良かったと信之助は思った。
「じゃあ、このゾウとキリン。どっちのネクタイの柄がいいですか?」
「………………………どっちも嫌なんだけど」
「でも、このネクタイの柄が1番かっこいいんですよ」
「よし。ネクタイの柄は俺が選ぶ。色違いにしてやるから、いいだろ?な!」
「まぁ、ポチが言うなら」
口を尖らせたが、佐久良は渋々と頷いた。
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