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その23新しい出会いを与えましょう

「ところで、どこに行くの?」 ゾウとキリン柄のネクタイを回避した信之助は佐久良と静かな街の中を歩いていた。ちなみに、2人の首元を彩っているネクタイはストライプ模様が入った至ってシンプルなもの。その他、つけたくもない奇抜な柄のネクタイも大量にあった。 歩きながら、そう言えばと思い出した。佐久良はスーツをよく着るが、ネクタイだけは藤四郎が選んで渡していたと。その他のセンスはいいはずなのに、ネクタイだけはおかしい。それが不思議でならないが、信之助にとって全然関係ないことだ。 「………………佐久良?」 「あぁ、なんでしたっけ?」 「だからさ、どこに行くのって俺聞いてるんだけど」 「会いに行くんですよ」 「誰に?」 「俺の敬愛してやまない、島田組の組長に」 「……………へ?」 屋敷から歩いて出たから、そう遠い場所には行かないだろうなと思っていたが。そこに行くとは信じられず、信之助はただ立ち止まって目を見開いて驚いた。 島田組と言えば、信之助でも知っているヤクザ。昔は過激派だったが、今は穏健派になっている。確か、今の組長に変わってからだと記憶していた。 「島田組って、あの島田組?」 「俺の知っている島田組は1つしかないんですが、まぁポチが想像している島田組だと思いますよ」 「うえー。俺がそんな人達と会って大丈夫かな」 「大丈夫ですよ。誠太郎さんは、そんな人ではないですから」 佐久良がそう言うから、信之助は信じることにした。会うのは少し怖いが、佐久良が敬愛していると言ったのだ。どんな人物なのか、信之助が気になるのも当たり前だった。 「ふーん。じゃあ、どんな人なの」 「どんなって、あんな人です」 佐久良が指を指す方を見ると、大型犬にけっこうな勢いで引っ張られている50歳ぐらいのおじさんがいた。顔がものすごい形相で、助けに行こうと思ったぐらいだ。 「………あれ?」 「そうです。あの、犬に引っ張られているおじさんが島田組の組長、島田誠太郎です」 そう。島田組の組長である島田誠太郎は、大型犬に引っ張られるただのおじさんだった。

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