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その24紹介してあげましょう
「いやぁ、恥ずかしいものを見られてしまったね」
「アレキサンダーも、誠太郎さんも。元気そうで何よりです」
佐久良がお辞儀をするから、隣にいた信之助もマネをして頭を下げる。それを少し(どころじゃないと信之助は思う)息を切らせた誠太郎が、ふふふと笑って受け入れる。優しそうなおじさんだが、この組の組長なんだ。佐久良が頭を下げるぐらいなんだから、本当にすごい人なんだと信之助は理解した。
だが、見た目的に見るとそうは思えないのが現状だった。
少し白髪混じりの髪に、少々なよっとした体つき。その他もろもろ。でも、信之助が1番組長に見えないと思ったのが、顔だった。
自分と同じ系統の顔。人混みの中だったら、絶対に見つからないだろう顔。そんな顔を持つこの人が、本当に組を引っ張って行けるのだろうか。
「いやー。佐久良がつれてきた人は、結構失礼なことを思ってるみたいだね」
「いえ、俺も思っています」
「冗談でしょ、佐久良」
「敬愛はしていますが、いつも思ってます」
思っていることだ駄々漏れていた信之助の隣で、誠太郎と佐久良がこんな会話をしていた時だ。ガラリと障子が開いて、お盆を持った男が入ってきた。その男の顔を見て、信之助は大声で叫んだ。
「や、ヤクザッ!!!」
信之助の叫びに、隣にいた佐久良と誠太郎はふいた。誠太郎に関しては、畳を叩きながら笑っていた。
確かに、信之助が叫んだみたいに入ってきた男はヤクザだ。見た目がそれを証明していた。ガタイがいいし、顔には大きな傷があるし。これぞ、信之助が思うヤクザ像そのものだ。
「何ですか、誠太郎。この誠太郎に似たバカそうな男は」
「俺に似たってなんだよ。……佐久良が、俺達に紹介したいってつれてきた子」
「あぁ、」
「可愛いでしょう、柊 さん」
「ハッ。誠太郎の方が何倍も可愛いわガキ」
ヤクザの中のヤクザ(名前は柊)と佐久良が睨みあっている。その横でアワアワと慌てる信之助と、のほほんとしている誠太郎。
「えっと、この2人のことは気にしなくていいよ。いつもこうだから」
「でも、」
「それよりも、君の名前を聞かせてよ。ね」
「………えっと、たな」
「この人の名前はポチです」
柊と睨みあいをしていた佐久良が爆弾発言をした。信之助からすれば馴染みのある呼び方だが、今この人達の前でそう呼ばなくてもいいだろうと思った。
絶対バカにするなって怒られる(特に柊)と思っていた信之助だが、怒られることはなかった。何せ、誠太郎が大笑いしたのだから。
「ぽ、ぽち…………ふふふっ」
「なかなかやるな、ガキ」
「まぁ、柊さんに鍛えられましたので」
何を鍛えられたのか理解したくなかったが、ホッとした信之助だった。
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