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その26弱いところを見せてあげましょう
「あ………っ。やっぱり、赤の麗しのレディを買ってよかったぜ」
買ったばかりのルンダが動く姿を眺めながら、信之助はニヤニヤしていた。このルンダの最大の特徴は、夜でも静かに動いてくれること。日中に動かすのもいいが、夜こうして動く姿をじっくり眺めるのもまたいい。
これは、クッキー片手にカルピスで一杯グイッとやるか。信之助がそう意気込んで、冷蔵庫に手をかけた時だ。緩い服に着替えた佐久良が、キッチンに入ってきた。
入ってきた佐久良に、声をかけようとしたが止めた。佐久良が少し顔をしかめている時は、放っておくのが1番いいと理解していた。
だから、信之助が声をかけることをせず冷蔵庫の中のカルピスに手を伸ばした。
「ポチ」
信之助に、佐久良から声をかけてきた。顔を佐久良に向ければ、手にはブランデーの瓶が握られていた。珍しい。佐久良は、屋敷で宴会の時以外酒は飲まないのに。
「どーした。ブランデーなんか持って」
「…………飲まないと、やっていけないことがありまして」
「仕事、うまくいかなかったのか?」
信之助からの質問に、佐久良は何の反応も見せない。それが「はい」と答えているように見えて、信之助は少し表情を緩めた。
こいつにも、こんな感じで弱い部分があるんだな。
それが分かってホッとした信之助が、佐久良にカルピスのペットボトルを見せた。
「ブランデーより、こっちを飲め」
「ぽち、?」
「ちょうど、ルンダを一緒に眺めてくれる奴を探してたんだ。お前の部屋で、赤の麗しのレディ、ルンダの観賞会をしよう」
「は、」
「だから、ブランデーは元あった場所に戻しとけよ。あんま、酒に頼んない方がいい」
「でも、」
「酒に頼ると、俺みたいにカルピス生活になるぞ。だから、止めとけ。な」
本当、自分よりも大人だとその時佐久良は信之助を見て思った。穏やかに笑いながら、カルピスを片手に持つなんて、きっと信之助にしか出来ない。
だから、少しだけ佐久良自身も笑ってしまった。
そして、言われた通りブランデーを棚の中に直した。
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