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その28一緒に朝を迎えましょう
隣で何かが動く気配がして、信之助はゆっくりと目を開けた。開けた瞬間広がったのは、佐久良の寝顔。ビックリして飛び起きそうになったが、佐久良がまだ眠っていたので我慢した。
これからどうしようかと、佐久良の部屋の壁にかかっている時計を見て口を開けて固まってしまった。
時計は、朝の8時23分を指していた。とっくのとっくに起きて、朝ごはんを準備し終わって、それをみんなで食べて、ごちそうさまを言ってるぐらいの時間帯だった。
ヤバイ。寝坊した。朝ごはん何も準備していない。朝ごはんも、信之助の仕事の内だ。日給8万5千円貰ってるのだ。やらないなんてことは、信之助の頭になかった。
佐久良を起こさないよう、そーっと起き上がろうとしたがどうにもそれが出来ない。何故なら、佐久良がガッチリと信之助に抱きついているからだ。
それを少しでも緩ませようとすると、佐久良がぐする。どうしようかと信之助が本気で考えていた時だ。寝ているはずの佐久良がクスクス笑っていた。
「おい佐久良。お前、何笑ってるんだよ」
「ポチが優しいなって。俺を起こせばいいのに、起こさないように必死になって」
「だって、ぐっすり眠ってんのにかわいそうじゃんって、早く準備しないとヤバイ」
「大丈夫です。昨日からあの人が帰ってるんで、たぶん準備はしてくれてますよ」
佐久良が誰のことを言っているか信之助には分からなかったが、大丈夫と佐久良が言うのだから大丈夫なんだろう。ホッとして身体の力を抜いたら、佐久良に唇を奪われた。
「んっ」
「おはようのチュー、まだでしたからね」
「ちょっ。くすぐったいっ」
「昨日、ポチから進んでキスをしてくれたんで。そのお礼です」
口だけじゃ飽き足らず、顔中にキスの雨を落としてきた。くすぐったくて逃げようとする信之助と、それを追いかける佐久良。他人がこの光景を見たら、ただのイチャついてるカップルにしか見えない。
「だから佐久良っ、やめ」
ろ、と信之助が言おうとした時、「組長、失礼します」という声が外から聞こえて、誰かが入ってきた。その誰かを見て、信之助は叫んだ。
「あの時、誠太郎さんの息子とエッチしようとしてた人!!!」
信之助にそう叫ばれ、部屋に入ってきた誰かは顔を真っ赤にしていた。
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