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その34少し怒ってあげましょう

「ところで、急にどうしたんだよ信之助。イギリスに来るって」 「あー。その、この人が行くって言うから」 信之助が、信太郎に佐久良を紹介しようと振り向いた。するとそこには冷めた目を自分達に向ける佐久良しかいなくて、ぴゃっと体を跳ねさせて信太郎の後ろに隠れた。不思議がられたが、信太郎も佐久良の顔を見て信之助と同じ行動を取った。 「ちょっ。信之助、あの怖い人誰!」 「年下なんだけど、雇い主と言うか、飼い主と言うか。だからその、信太郎。俺を隠してこわい!」 「俺だって怖いよっ」 くるくるとお互いの背中に隠れたりしていたら、佐久良が静かな声で「ポチ」と信之助を呼んだ。これは本気で怒ってらっしゃる。そう感じた信之助は、プルプル体を震わせながら佐久良の元に行った。 「ポチ。あんまり、飼い主の前で他の人とイチャイチャしないでください」 「だって、久々だったし」 「するなって言ってるんだ」 「…………ワカリマシタ」 信之助の返事を聞いて、いい子いい子するように頭を撫でた。佐久良と信之助の行動を見ていて、信太郎は口を開けて驚いている。 「し、信之助。お前、年下のなんちゅープレイを、」 「プレイとか言うな、「ポチ。だからあれほどイチャつくなと」分かったから、そんな怖い顔しないで!」 ちょっと引きぎみで信之助達を見る信太郎と、やっぱり冷めた目をしている佐久良。そんな2人に挟まれて信之助がアワアワしていると、信太郎が降りてきた高級車からもう1人降りてきた。 背が高くて、ガタイもよくて、ちょっと渋めな顔がかっこいい金髪の男。降りたと思ったら、するりと信太郎に近寄った。 「たま。お前も、何他人とイチャついているんだ」 「ちょっ!外でそう呼ぶなって言ったじゃんフィリップ!」 金髪男は、信太郎のことを「たま」と呼んだ。信太郎はそれを怒ってはいるが、受け入れているようにも見える。 「……信太郎。お前も、金髪イケメン男となんちゅープレイをしてんだよ」 双子はやっぱり、いろんなところで似ているらしい。それを信之助は実感した。

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