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その38高級ホテルに泊まりましょう

自分達を周りの嘲笑から守ってくれたフィリップと佐久良に、信太郎と信之助は心をときめかせていた。さっきまでは、穴があったら入りたいぐらいに恥ずかしかったのに、今はそうでもない。むしろ、笑いが込み上げてきた。 「ちょっ。フィリップ、お店に迷惑かかるだろ。俺もこぼして、フィリップもこぼしたら」 「大丈夫だ。それよりも、お前が笑い者にされる方が嫌だな」 「佐久良も、何フォーク落としてんだよ」 「どうしてもポチとお揃いがいいんですよ」 フィリップと佐久良の言葉に、心がほかほかと温かくなる。 「ありがとう、フィリップ」 「佐久良、ありがとう」 ちょっとだけ照れ臭くて小さくなってしまったお礼の言葉。でも、聞こえていたようでとろけるような甘い笑みを浮かべて、フィリップは信太郎の頭を、佐久良は信之助の頭を撫でた。 こんなことがあったにも関わらず、店員さんは動じることなくテキパキと行動して4人のテーブルを元の状態に戻した。さすがは高級レストランの店員だと、信之助は感心した。 ほどなくして運ばれてきた料理は、本当に美味しかった。信之助は、もう食べることはないだろうとちょっと泣きながら食べていた(感動の涙)。そんな信之助の様子を、信太郎は笑っていた。フィリップは、こんな人もいるんだなと感心げに。佐久良は、ただ愛おしそうに信之助を見ている。 美味しい料理を食べ終わり、4人はレストランを出た。 「ごめんね。本当は俺の家に泊めてあげたいけど、諸事情により出来なくて、」 「いいよ別に。こっちが急に来たんだから」 「だからこちらで、泊まるホテルは用意しておいた。金も払ってあるから、気にせず泊まるといい」 「ありがとうございます。ほら、ポチもお礼」 「ありがとうございます、フィリップさん」 「何。たまの大切な家族のためだ。気にするな」 フィリップと懐の深さに感動したところで、4人は別れた。フィリップが用意してくれた地図を頼りに、ホテルへと向かう。レストランから少し離れた場所に、そのホテルはあった。 「佐久良。もしかして俺ら、このホテルに泊まるの?」 「みたいですね」 フィリップが用意したホテル。そこは、1拍うん十万するであろうホテルだった。ヤバイ、俺こんなホテル泊まるの無理。信之助はそう思っていたが、佐久良は構わずホテルの中に入っていく。こんなところで置いていかれたくなくて、慌てて佐久良のあとを追って中に入った。 「フィリップさん、2部屋用意しているみたいですけどどうします?」 「へ?」 信之助がホテルの中に入ると、佐久良はとっくのとっくにチェックインを済ませていた。 「2部屋って部屋が別々ってこと?」 「そういうことです。でも、1部屋にすることも可能みたいですけどどうしますか?」 佐久良の問いかけに、信之助は迷わず1部屋にしてと答えていた。こんな高級ホテルに1人で泊まりたくないというのが大半だが、ほんの少し。ほんの少しだけ佐久良のそばにいたいと思ってしまったのだ。 離れたくない。だから。 「一緒の部屋にしよ、さくら」 そう言っていた。

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