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閑話
【フィリップと信太郎の出会い】
俺が社長に告げられた転勤先は、日本から遠く離れたイギリスだった。
最初言われた時、何かの冗談だと思ったがそうではないらしい。何で俺かと思ったら、英語がペラペラだし頭がいいからという理由で選ばれた。それだけじゃないのは分かっているけれど、正直信之助のそばを離れるのは嫌だ。
何せ俺は、自慢じゃないが1人では何も出来ない。ネクタイを結ぶことすら出来ない奴だ。だって、信之助がやってくれるんだもの。俺がしなくてもいいんだもん。
でもイギリスへ行ってしまえば、信之助にやってもらえなくなる。ご飯の準備も、部屋の片付けも、ネクタイを結ぶことも。
だから断ろうと思ったのに、信之助の奴が勝手にOKを出していた。
「何で社長にOK出してるんだよ。俺、断るつもりだったのに」
「それが分かってたから、社長さんにOK出したんだよ。そろそろ俺から離れろ、信太郎。そして、田中家のヒーローになれ」
「何だよそれ、」
「田中家はバカの集まりだ。その中で唯一お前は頭がいいんだ。だから、海外行ってこい。お前のためにもなるし、な」
信之助に頭ポンポンされたら、正直言うことを聞くしか俺に道は残されていない。それぐらい、信之助の頭ポンポンの効果は抜群なのだ。
それに自分でも分かってるんだ。おっさんが、双子の兄にいつまでも頼ってはいけないって。
だから俺は、1人でイギリスに旅立った。
トーノカンパニーイギリス支店に来た俺は、慌ただしい毎日を過ごしていた。朝慌てて起きて、適当に朝ごはんを食べる。そしてネクタイもこれまた適当に結んで、家を出る。
会社につけば、日本から送られてくる仕事を片付け、イギリスで発生した仕事も片付ける。毎日か充実していた。ネクタイは、ちゃんと結べないけど。
でもそんな中、ある会社との提携がうまくいかなかった。イギリスでトップと言っても過言ではない会社で、社長もイケメン。そんな会社が、トーノカンパニーとの提携を渋っているのだ。
でもある日突然、その会社の社長がうちと提携したいと言ってきた。ビックリしたのか、日本から社長が飛んできたほどだ。これで安心だと思っていた矢先、俺は社長に呼び出された。
誰もいない会議室の中で、社長に会社をやめろと言われた。
「え?俺、ここまで来てクビ?なんですか」
「クビという訳じゃないです。ただ、ファントム(会社名)と提携を結んでる間、そこで働いてほしいんです。ファントムの社員として」
「何でまた」
「それが、提携する条件だとファントムの社長が言ってきたんです」
社長がそう言うと、いきなり金髪のイケメン男が会議室に入ってきた。
「TAMA!!!」
たま。そう叫ぶと、その金髪イケメン男は俺に抱きついてきた。
**********
信之「って、何お前が主人公になってるんだよ!」
信太「俺だって主人公になりたかったんだよ。ほら、お便りも来てたし、たまと呼ばれる男さんから」
信之「それ絶対お前が自分でお便りだしたんだろ!」
信太「別にさ、それぐらいいいじゃんか!いつもお前は出てるんだから」
信之「ったく。仕方ねぇな。1回だけだからな」
信太「それはやだ」
信之「っ、ここの主人公は俺と佐久良!だからでしゃばってくんなっ」
信太「俺だってお前と同じ顔なんだから、主人公になれる!」
フィ「全く。俺のたまは、本当に可愛い」
佐「何を言ってるんですか?ポチの方が可愛いんですよ。ほら、あんな風にプンプンして」
フィ「それを言うなら、俺のたまだって」
佐「俺のポチは、」
フィリップと佐久良の信太郎と信之助の自慢話が始まった。
その自慢話は、信太郎と信之助が気づくまで続けられた。
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