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その41プレゼンを貰いましょう

「かいごう?」 「そうです。今日会の会合があるので、ポチも参加しましょう」 イギリスから帰国して1週間もしないうちに、信之助は佐久良の言う会合とやらに参加することになった。 詳しい話を聞けば、秋島組は島田組がトップである臨賀(りんが)会の傘下の組らしい。そして、その臨賀会の傘下の組がこぞって集まるのが会合だとか。それを、1年に4回やる。そのうちの1回が今日なのだ。 そんな組として大切な会合に自分が参加していいのかと思ったが、信之助くんもおいでと誠太郎からメールが来ていた。 臨賀会トップの島田組の組長から言われたら、行くしか信之助に道は残されていない。イギリスで買ってもらったスーツに身を包み、ネクタイもキチッと結ぶ。 「ポチ?準備は終わりましたか?」 「終わったよ。って、お前ネクタイ結んでねぇのかよ」 「はい。ポチにやってもらおうかと思いまして」 どうせ頼んでくると分かっていたし、ダサい柄のネクタイを持ってくるのも分かっていた。だから信之助は、こそっと買っておいたネクタイを結んで締めてあげた。 「このネクタイ、」 「俺からの一応のプレゼント。と言っても、お前から貰った日給で買ったんだけどな」 「そう、なんですか」 「一応世話になってる身だし、それにさ、ちょっとお前に何かお礼をあげたかったんだよ。で、考えた。それでネクタイ思い付いたんだよ。ネクタイなら、いつでも使ってもらえるなって」 「ぽち、」 「これでもお前のこと、大切に思ってんだからな」 そう言い切った信之助の笑顔は、嘘を言っているようではなかった。信之助は、ちゃんと自分のことを想ってくれている。それが実感できて、佐久良は少しだけホッとした。 イギリスのあの夜のことで、ちょっとだけ自信をなくしていたのだ。でも、信之助なりに考えてくれていたのだ。 「――――――ありがとうございます、ポチ」 「気にすんなって」 佐久良が信之助をもっと好きになった瞬間だった。

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