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その43あれの話し合いをしましょう
「じゃあ、今回の会合の議題なんだが」
誠太郎が厳しい顔で話を切り出してきた。その場にいた全員が、誠太郎と同じ厳しい顔つきになり言葉を待つ。信之助も、周りのマネをして厳しい顔つきをしてみたが、佐久良に笑われていた。
「皆も分かっていると思うが」
ごくり。誰かが唾を飲み込む音が聞こえるぐらい、辺りはしんとしている。信之助も次第にドキドキしてきた。
「秋島組に、新しい人が入った。名前は田中信之助くんだ。佐久良はポチと呼んでいるらしい」
「へ?俺?」
「ヤクザではないが、秋島組の仲間と言ってもいいだろう。だからな、歓迎会をしようと思う」
それ、会合で話し合う必要のあるものなのかと信之助は思った。でも、この場にいる皆からすれば当たり前らしい。他の組でも、新しい仲間が出来れば、それを皆で歓迎する。
誠太郎の言った通り、俺ヤクザじゃないからそんなの別にいいのに。信之助はそう思っているが、誠太郎とその他大勢はそう思ってはいないようだ。
早速と言ったように、歓迎会で何をするかいろいろ意見が飛び交っていた。
「佐久良はさ、これ分かってたの?」
「これって言うと?」
「今回の会合の内容だよ。俺の歓迎会って、やんなくてもよくね?」
「そうはいきませんよ。ヤクザでもそうじゃなくても、臨賀会に関わりを持ってしまった。ならば、仲間だから皆で守ろう。そんな意味を込めて歓迎会を開くんです」
「へぇ」
「だから、ありがたくやってもらいましょう。あ、ちなみにポチはモコモコの物と家電(掃除関係)が好きですからね!先輩方、そこのところよろしくお願いします」
おぉ!と野太い返事がこだました。
信之助からすればちょっと照れ臭かったが、嬉しかった。だってヤクザが自分のための歓迎会を開いてくれるのだ。今までもこれからも絶対に起こることのなかったことが今起きようとしている。
ヤクザがするやつだから、豪華そうだけどちょっと怖そう。そんなことを考えていたら、近くにいる組の話し合う声が聞こえた。
「佐久良の奴、ポチとか呼んでたな新入りのこと」
「そうっすね」
「だったら、犬のコスプレのやつとか喜びそうじゃねぇか?尻尾はケツの穴に突っ込む系のやつ」
「おぉ、それはいいですね!膝の上に座らせるくらいですから、絶対に佐久良さんの情人 ですよ。だから喜んでくれますって、夜が燃える的な意味で」
この会話は佐久良も聞こえていたようで。ニッコリと怖い笑みを浮かべて、信之助を見ていた。この笑顔、貰ったらつけてあげますね。的な笑顔だ。信之助にはそれが分かった。
やっぱり、ヤクザの歓迎会は怖い。そう思った。
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