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その45少し距離を縮めましょう
突然のことで佐久良は驚いていた。何せ、信之助が自分と一緒の部屋で過ごすと言い始めたのだから。
断ろうと思った。今信之助と過ごせば、たぶん自分は我慢が出来ないと。早い段階で、信之助が嫌がることをしてしまうと。
「ポチ。それは断ること可能ですかね?」
「んにゃ、無理だ」
断ろうとした。でも、信之助はそれを受け入れようとしなかった。それに少しだけイラッとした。
自分の気持ちを知っているはずなのに、何でそんなことをするんだろうか。信之助に嫌われたくない。だから我慢をしている。それなのに。
「無理じゃありません。一緒の部屋なんて、断ります」
「それは受け入れられない。俺が受け入れるのは、はいって返事だけだ」
「っ、俺は!イギリスで断られたこと、忘れた訳じゃない!!」
虚しかった。
一目惚れをした信之助と、やっとひとつになれると思っていたのに。だけど、それは叶わなかった。あれほど、自分で処理をするのが虚しいと感じたことはない。
だから、少し信之助を嫌いになろうと思った。でもやっぱり大好きだから。
「だから、だろ」
ポツリと信之助が呟いた。その声が少し震えていて、それを感じた佐久良は怒りを押さえた。
「あの時、酷いことしたって分かってる。嫌われるって思ってた。でもさ、俺、お前に嫌われたくないんだよ」
「ぽち、」
泣いているんじゃないかと、信之助の声を聞いて思った。佐久良が思った通り、信之助は少しだけ泣いていた。
「それにさ、俺、イギリスから帰ってきて寂しいの。忘れらんないの、お前のぬくもりが。お前と一緒に寝たことが」
「………………」
「あと、俺も佐久良と、その、な」
“一緒に、なりたい”
佐久良はたまらなくなって、信之助を抱き締めた。ギュッと抱き締める力を強くすれば、信之助がおずおずと言ったように佐久良の背中に腕を回した。
「バカですね、ポチは」
「俺だって考えてるんですぅ。だからさ、ちょっとでも近づこうと一緒の部屋で過ごすって決めたんだよ」
「それで?俺には我慢しろ、と」
「そーゆーこと!」
そう言って信之助は笑った。
本当、信之助には叶わない。
笑っている信之助を見ながら、佐久良はそう思った。
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