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閑話
【信之助、犬を飼いたい】
アレキサンダーの散歩をしていた時だ。信之助は、アレキサンダーの姿を見ながらふと思った。
“自分も犬が飼いたい!”
こうして毎日一緒に散歩をして、家でもいっぱい遊んで。そういう日々を想像してしまうのだ。
でも、よく考えたら自分が今「犬」のような状態だと思い出した。
毎日ポチと佐久良に呼ばれ、今は金に目がくらみ首輪をしている。そして佐久良の言うことには基本的逆らえない。もう、犬そのものだった。
でも、自分だって犬を可愛がりたいんだ。
そう佐久良に言ってみたところ。
「分かりました。じゃあ、明日楽しみにしていてくださいポチ」
ニコリと笑ってそう言ってくれたから、犬を飼ってくれるんだと思った。だったら名前を何とつけようか。豆蔵。そうつけよう。
そう信之助は考えていたのだ。本物の犬が、秋島組の屋敷に来ると。
でも。
「おはようございます、ポチ。いえ、飼い主様」
朝起きると、犬耳をつけた佐久良がいた。慌てて起きて部屋を出れば、犬耳をつけた藤四郎がいた。他の組員も犬耳をつけている。しかも、一部の人には尻尾までついていた。
「尻尾は間に合わなかったんですけど、耳は全員分あったので。飼い主様が犬を可愛がりたいと言うので、いろいろ揃えましたよ」
そういう意味じゃないんだけどなと思ったが、自分のことを想って準備してくれたのは十分理解できた。
だからこそ、褒めてとさっきから自分を見てくる佐久良の頭を撫でてあげた。
「ありがとうな、佐久良」
「いいえ。でも、1番可愛がるのは俺にしてくださいね。他の犬ばかりに目移りされると、俺嫉妬しちゃいますから」
「ほんと、俺の犬はわがままだなぁ」
佐久良の頭を撫でながら、信之助は笑うのだった。
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